どんな商品?
ロッテが1984年3月に発売したビスケット菓子。六角柱の箱に、コアラの絵が描かれたチョコレート入りビスケットが入っています。
発売当時あなたは何歳?
空洞ビスケットの技術と、コアラ初来日のニュース
ロッテ公式のインタビューによれば、「コアラのマーチ」が生まれた当時、ロッテはすでに1980年代初頭から、空洞型のビスケットにチョコレートを注入する技術を開発していました。そこにオーストラリアからコアラが日本へ初めて贈られるというニュースが入ったことが、商品化の直接のヒントになったといいます。
ウォーカープラスのインタビューでロッテの江幡辰也さんが語るところによれば、モチーフをコアラに決めるにあたっては、かつてのパンダ初来日ブームも参考にしたそうです。手で持っても体温で溶けにくいという技術上の利点に加え、動物であればCM出演料もかからず、人によるスキャンダルとも無縁―そうした現実的な理由も、コアラというモチーフを後押ししたようです。
「マーチ」という名前とパッケージに込められた意味
Jタウンネットの取材でロッテの村尾雄一さんが語ったところによれば、「コアラは木の上で1日の殆どを寝て過ごす動物です。お菓子は明るい世界観を作っていくという役割があるので、コアラにもっと楽しさを付加できないかと考えました」とのこと。そこで選ばれたのが「マーチングバンド」というモチーフでした。「コアラがマーチングバンドを組んで日本にやってくるという楽しいイメージ」から名付けられたのが「コアラのマーチ」で、初代12種類の絵柄のうち約半分には、太鼓やラッパなどの楽器を持ったコアラが描かれていました。のんびり眠ってばかりの動物に、あえて行進というにぎやかな動きを与えた―そのギャップこそが、この商品のユーモアの原点だったのかもしれません。
六角柱のパッケージについても、コアラが好んで食べるユーカリの木をモチーフにしたものだと、ロッテ公式サイトで説明されています。ウォーカープラスの記事によれば、この六角形のパッケージは発売当時「店頭で大いに目を引いた」といいます。丸でも四角でもない六角柱の箱が並ぶ棚は、他のお菓子とは一線を画す存在感を放っていたことでしょう。
コアラ来日と重なった発売のタイミング
発売された1984年3月は、日本にオーストラリアからコアラが初めてやってくるというニュースで話題になっていた時期と重なっていました。コアラのマーチは、コアラ6頭が来日した同年10月25日より約半年前に発売されていました。ニュースで本物のコアラを見る前から、子どもたちの手元にはすでに何十種類ものコアラの絵柄が届いていた―そんな時間差も含めて、商品化のタイミングの巧みさがうかがえます。
「まゆ毛コアラ」と「ラッキーコアラ」伝説
ウォーカープラスのインタビューで江幡さんが明かしているのが、後年ファンの間で語り継がれることになった「まゆ毛コアラ」「盲腸コアラ」の存在です。ラッパを吹くコアラの眉間にできた「シワ」が眉毛に見えたことから「まゆ毛コアラ」、転んだ跡が手術跡のように見えたことから「盲腸コアラ」と呼ばれるようになったといい、これらはいずれもメーカーが意図したデザインではなく、お客さまの口コミから生まれたものだったといいます。
1990年頃には「『まゆ毛コアラ』が出ると幸せになる」という噂が女子高生を中心に爆発的に広がり、「ラッキーコアラ」ブームが巻き起こったと江幡さんは振り返っています。ただし江幡さんは同時に「『まゆ毛コアラ』や『盲腸コアラ』は今も昔も確率操作などはしていません。各絵柄が出る確率はすべて同じ」とも明言しており、都市伝説的な人気と、実際の製造上の事実は別物だったことになります。箱を開けるたびに「今度こそ」と絵柄を確かめた記憶がある人にとっては、少し種明かしのようなエピソードかもしれません。
絵柄は12種類から700種近くへ、そして記念日にも
発売当初は12種類だった絵柄は、ロッテ公式サイトによれば1988年には24種類に増え、現在までに登場したキャラクターは約700種類近くにのぼるといいます。長い年月をかけて絵柄のバリエーションを広げながら、商品自体は発売から40年以上にわたって販売が続けられています。
パッケージのキャラクター「コアラのマーチくん」は大きな耳が特徴です。この耳の形が数字の「33」に見えることと、3月がブランドの誕生月であることから、ロッテは3月3日を「コアラのマーチの日」として制定しています。発売から40年以上が経ってからの記念日制定であり、商品自体が長く販売され続けてきたことを示すものといえます。
海を渡ったコアラたち―タイ・台湾をはじめ世界へ
コアラのマーチは日本国内だけの商品ではありません。ロッテ公式サイトによれば、日本発売から25年後にあたる2009年、東南アジアを中心に商品の魅力を広めるため、タイでコアラのマーチの製造・販売が始まりました。以来、コアラのマーチはアメリカ、ブラジル、香港、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアなど、世界各地の店頭に並ぶようになっています。
中でも台湾では特別な存在感を放っているようです。ロッテ公式サイトの紹介によれば、タイ製造のコアラのマーチは台湾における全体売上の約3割を占める看板ブランドとなっており、毎年4月には「コアラウィーク」と称した大規模なキャンペーンも展開されているといいます。さらに旧暦のお盆にあたる中元節の時期には台湾向けの専用商品も用意されるなど、現地の文化や年中行事に合わせた独自の売り方も行われています。日本で生まれたコアラたちが、発売から半世紀近くを経て、海を越えた先でも独自の存在感を築いている―そんな広がりも、この商品の息の長さを物語っているといえるでしょう。