どんな商品?
ぺんてるが1976年に発売した筆ペンです。ナイロン毛を用いた毛筆タイプの製品です。
発売当時あなたは何歳?
筆職人の家に生まれた創業者
ぺんてる筆を発売したぺんてる(当時・大日本文具)の歴史をたどると、筆記具そのものへのこだわりが見えてきます。創業者の堀江幸夫氏の父・堀江利定氏は筆職人で、1911年に東京・浅草で「堀江文海堂」という筆や墨、硯を扱う卸問屋を営んでいました。堀江幸夫氏自身は1946年に大日本文具株式会社を創業し、1971年に社名を「ぺんてる」へと改めています。筆づくりの家に生まれ育った創業者が、後年ナイロン毛の筆記具を世に送り出すことになった、という点は、この商品の背景として見逃せない事実です。
「これからの日本には教育が必要だ」という出発点
終戦後、堀江幸夫氏は「これからの日本は未来をつくる・支える子どもたちへの教育が最も必要だ」という考えのもと、教材として役立つクレヨンや絵の具といった画材づくりから事業をスタートさせたといいます。ぺんてる筆も、こうした「書く・描く」ことに関わる道具づくりの延長線上に生まれた商品のひとつだったことになります。
ナイロン毛で「筆」を再現するという発想
ぺんてるは1976年(昭和51年)、ナイロン毛を用いた毛筆タイプの筆記具「ぺんてる筆」を発売しました。天然の毛を使う伝統的な筆とは異なり、ナイロン毛で穂先を再現することで、墨をすったり毛先の手入れをしたりする手間なく、キャップを外せばすぐに筆文字が書けるようにした商品です。硯と墨が必要な道具だったはずの「筆」を、日常的に持ち歩ける筆記具に変えてしまった点に、この商品の発明としての価値があるといえます。
培った技術は、その後の製品にも
ぺんてる筆で培われた技術は、その後の商品展開にも受け継がれました。1978年には、この技術を応用して海外向けホビー用の筆ペン「カラーブラッシュ」が発売され、2012年にはそのカラーブラッシュをリニューアルした「アートブラッシュ」も登場しています。1本の筆ペンの技術が、書道用途を超えて別の商品群へと広がっていったことになります。
1970年にナイロン毛完成、発売までさらに6年
ぺんてる公式サイトの特集ページによれば、ナイロン製の合成毛が完成したのは1976年発売の6年前にあたる1970年のことでした。そこからさらに改良が重ねられ、独自のカートリッジ式毛筆ペン「ぺんてる筆」として発売にこぎつけたのは1976年。素材の完成から商品化まで、水面下でさらに歳月が費やされていたことになります。
2014年、「LONG LIFE DESIGN」を受賞
ぺんてる公式サイトの製品デザインページによれば、ぺんてる筆(本体サイズ13×13×175mm、デザイン:ぺんてるデザイン室)は2014年に「LONG LIFE DESIGN」を受賞し、グッドデザイン賞公式サイトでも紹介されています。発売から長い年月を経てなお、デザインそのものが評価の対象になった一本だといえます。