昭和・平成の文房具の歴史|クーピー・キャンパスノート・ぺんてる筆はいつ生まれた?
公開日:2026年8月28日

※AIによるイメージ画像です
色鉛筆、ノート、筆ペン——。毎日使っていた文房具の中には、発売から40年、50年が経った今も店頭に並び続けているロングセラー商品があります。
クーピーペンシル、キャンパスノート、ぺんてる筆。子どもの頃に一度は手にしたことがあるかもしれないこれらの商品は、いつ、どんな理由で生まれたのでしょうか。
このページでは、3つの文房具それぞれが生まれた背景と、半世紀近く定番であり続けている理由を振り返ります。
なぜ昭和の文房具は今も定番であり続けるのか
3つの商品に共通する誕生の理由
クーピーペンシル(1973年)、キャンパスノート(1975年)、ぺんてる筆(1976年)——。3つの商品に共通するのは、いずれも当時の「書く」「描く」道具が抱えていた具体的な悩みを解決するために生まれた、という点です。
そしてもう一つの共通点は、発売から半世紀近くが経った今も、姿を大きく変えないまま販売され続けていることです。トレンドの移り変わりが速い文房具の世界で、これほど長く定番であり続ける商品は決して多くありません。
ただし、あとで見るように、この3商品は「変わらなかったから残った」のではありません。基本の役割や見た目は保ちながら、幼児向けの派生商品や、素材・耐久性の細かな改良を積み重ねてきたという共通点があります。「変えない部分」と「変えていく部分」を分けて考えることが、長く定番であり続けた理由に近づく手がかりになりそうです。
文部科学省の資料によれば、日本の学校教育はこの時期、量的な拡大が続いていた時代でした。小学校の児童数は1981年(昭和56年)に第二次ベビーブームの影響でピークを迎えたとされ、1970年代はその手前で児童数が伸び続けていた時期にあたります。学校で使う道具が必要とされる子どもの数そのものが多かったこの時代に、書く・描くという基本行為に関わる道具が相次いで生まれたことは、単なる偶然ではなく、当時の社会が求めていた市場の大きさとも重なっていたと考えられます。
クーピーペンシル・キャンパスノート・ぺんてる筆は、いずれも1970年代に発売された商品です。同じ1970年代に発売された他の商品は、年表ページや、1970年代のページでもあわせて確認できます。
出典:サクラクレパス公式「クーピーペンシル50周年」サイト/コクヨ公式サイト(Campusノート ヒストリー)/ぺんてる公式サイト(沿革)/文部科学省「教育の量的拡大に伴う質的変化」
文房具ごとの歴史
クーピーペンシル(1973年)
クーピーペンシルは、サクラクレパスが1973年に発売した色鉛筆です。「消しゴムで消えない」「芯が折れやすい」「広い面が塗りにくい」——そうした従来の色鉛筆への声に応え、全体が芯でできた新しいタイプの色鉛筆として生まれました。
サクラクレパス公式サイトによれば、商品名の「クーピー(COUPY)」は、「一撃」を意味するフランス語「COUP(クー)」に「Y」を付けた造語だといいます。「この商品で色鉛筆市場に一撃を加えるぞ」という開発側の意気込みが、そのまま商品名になったことがわかります。発売当初は12色セットと18色セットの2種類が展開されていました。
同サイトによれば、クーピーが消しゴムで消える理由は、原料そのものの違いにあります。クーピーの原料である合成樹脂は紙の表面の凸凹に入り込みにくいため消しゴムで消せる一方、通常の色鉛筆はベースとなるロウが顔料を抱き込んだまま紙の凸凹に残ってしまうため消えないといいます。見た目は色鉛筆に近くても、芯の中身が違うからこそ「消しゴムで消える色鉛筆」という当時にはなかった特徴が実現していたことになります。同サイトでは、何色塗り重ねても色が濁らず鮮やかに発色する点も、クレヨンや通常の色鉛筆とは異なる特徴として挙げられています。
発売から2023年で50周年を迎え、今も色鉛筆売り場の定番として販売が続いています。
サクラクレパス公式サイトによれば、クーピーペンシルは「なめらかな描き心地」「消しゴムで消しやすい」「芯が折れにくい」「手や机を汚しにくい」といった特徴が評価され、小学校の理科・社会科などの授業で使う色鉛筆として広く使われるようになっていったといいます。家庭のお絵かき道具としてだけでなく、学校の教材として選ばれてきたことが、世代を超えて多くの人がクーピーを手にした経験を持つ理由の一つと考えられます。
同社によれば、2008年と2011年には、就学前の小さな子ども向けに、短いタイプや三角形の軸を使った商品ラインナップも展開されました。基本設計を保ったまま対象年齢の広がりに合わせて派生商品を増やしていったことも、クーピーペンシルが長く売り場に残り続けてきた背景の一つといえます。
Wikipediaの解説によれば、現在の標準品は全60色まで色数がそろい、限定生産では90色・100色というセットも発売されているとされています。幼児向けの8色セットや、大人向けの落ち着いた色合いを集めた「カラーオンカラー」30色セットのように、対象年齢や用途に応じて色数の幅そのものを分けている点も特徴です。三角軸の「さんかくクーピーペンシル」、木軸を使った「クーピー色鉛筆」(全24色)、手が汚れにくい仕様のシリーズなど、軸の形や素材を変えた派生商品も複数展開されているといいます。12色からスタートした商品が、半世紀を経て色数・軸の形・対象年齢という3つの軸で枝分かれしていったことがわかります。
Campus(キャンパス)ノート(1975年)
Campus(キャンパス)ノートは、コクヨが1975年に全国の学生向けに発売したノートです。糊でページを綴じる「無線とじ」という製法を採用し、開いたときにフラットになりやすく、耐久性にも優れたノートとして登場しました。
コクヨ公式サイトによれば、無線とじという製法自体は、Campusノートの発売より16年も前の1959年にコクヨが開発していた技術でした。当時の学生向けノートは糸で綴じる「糸とじ」が主流で、無線とじはそれとはまったく異なる製法だったといいます。すでに手元にあった技術を、学生向けノートという新しい形にして送り出すまでに、それだけの年月がかかったことになります。
同サイトによれば、1975年発売の初代Campusノートは、表紙に英文字とA罫・B罫の罫線イメージを大胆に表示するデザインが採用されていました。棚に並んだときに罫線の種類が一目でわかるという、この時点ではまだ目立つ工夫だった表紙デザインは、後の世代でさらに発展していきます。
発売から50年近くが経った今も、文房具店や通販サイトで販売が続く定番ノートです。
コクヨ公式サイトによれば、無線とじという基本構造そのものは発売時から変わっていませんが、その後も細部の改良は積み重ねられてきました。2000年には、最後までノートを使っても破れにくい新しいクロス(背表紙部分の素材)の開発に成功し、2011年にはこの背クロスの表面加工を見直して、ペンで書き込みがしやすいように改善したといいます。表紙のデザインだけでなく、綴じ目という目立たない部分でも、使い勝手を高める工夫が続けられてきたことがわかります。
1冊のノートを最後のページまで気持ちよく使い切れるかどうかは、当時のノートとしては地味だけれども重要なポイントでした。この「壊れにくさ」への地道な改良の積み重ねが、キャンパスノートが学生の定番として選ばれ続けてきた理由の一つと考えられます。
コクヨの公式リリース(2025年8月20日)によれば、キャンパスノートは2024年末時点で累計37億冊を超える販売数に達し、これを機に単なるノートの商標から「まなびかた」全体を支援するブランドへと刷新されています。この累計数と刷新の詳しい内容はキャンパスノートの歴史で紹介しています。
1冊のノートとして生まれたCampusが、半世紀を経て「ノートをどう使うか」という学び方そのものを提案するブランドへと役割を広げていったことは、単に売れ続けているだけでなく、時代に合わせて自らの立ち位置を変えていく姿勢を示す出来事といえます。
表紙デザインが世代ごとにどう変わってきたかは、キャンパスノートの歴史で詳しく紹介しています。
出典:コクヨ公式サイト(Campusノート ヒストリー)/コクヨ公式ニュースリリース(2025年8月20日、Campusブランド刷新)
ぺんてる筆(1976年)
ぺんてる筆は、ぺんてるが1976年に発売した筆記具です。ナイロン製の毛を使い、墨をすったり穂先の手入れをしたりする手間なく、キャップを外せばすぐに筆文字が書けることを目指して開発されました。
Wikipedia「筆ペン」の解説によれば、筆ペンという製品自体は、ぺんてるが最初に生み出したものではありません。1972年にセーラー万年筆が「ふでぺん」を発売したのが筆ペンの発明とされ、これを商業的なヒット商品に育てたのは呉竹精昇堂(現・呉竹)だったとされています。サインペンの元祖であるぺんてるが1976年に発売したぺんてる筆は、筆ペンという製品の歴史の中では後発の商品だったことになります。
現在もぺんてる公式サイトの商品ラインナップに掲載されており、発売から半世紀近くを経た今も、手軽に使える筆ペンとして販売が続いています。
ぺんてる公式の商品ページによれば、ぺんてる筆は毛筆の最上級品とされるイタチ毛などの天然毛を一切使わず、ナイロンと穂先の先端技術で天然毛に近い書き味を再現しているといいます。天然毛を使わないことで、品質を安定させながら手に取りやすい価格を保てることが、家庭に広く行き渡った背景の一つと考えられます。
同ページでは、結婚式の芳名帳やのし書きといった場面での利用例も紹介されています。年賀状の宛名書きや冠婚葬祭のあらたまった場面で、墨をすらずにすぐ筆文字が書けるという手軽さは、日常のちょっとした「あらたまった一筆」を誰にでも扱いやすくした点で、単なる筆記具以上の役割を担ってきたといえるでしょう。
3商品に共通する「残り方」
クーピーペンシル・キャンパスノート・ぺんてる筆の歩みを並べてみると、3つとも同じような「残り方」をしていることに気づきます。基本の見た目や役割は発売時からほとんど変えていない一方で、周辺の工夫だけは時代に合わせて静かに更新し続けてきたという点です。
クーピーは対象年齢を広げる派生商品を、キャンパスノートは表には見えない綴じ目部分の耐久性を、ぺんてる筆は天然毛を使わない技術によるコストと品質の両立を、それぞれ独自の形で積み重ねてきました。3商品とも市場で最初の存在だったわけではなく、後発として挑んだ商品でしたが、素材や仕組みを工夫して質で勝負し、それを長い時間をかけて磨き続けたことが、半世紀近く生き残った共通の土台だったといえるでしょう。
あなたが子どもの頃の文房具は?
生まれ年を選ぶと、あなたが子どもだった頃の年代・年齢帯にまつわるページへのリンクを表示します。
これ覚えてる?
学校・地域・年代によって内容は異なります。あなたの記憶と重なるものはありますか?
- クーピーペンシルは何色セットを持っていましたか?
- 筆箱の中に、ぺんてる筆が入っていたことはありますか?
- キャンパスノートを何冊使いましたか?表紙のデザインを覚えていますか?
出典・注意事項
本ページは、各メーカー公式サイトの情報をもとに構成しています。個別の情報については、各見出しに出典を明記しています。より詳しい商品情報は商品ページをご覧ください。
ページ内のイメージ画像はAIによるものであり、特定の人物・場所・年代を再現した実際の写真ではありません。