どんな商品?
やおきんが1979年に発売したスティック状のスナック菓子です。
発売当時あなたは何歳?
新しいパフマシーンから生まれた、新しいお菓子
うまい棒が生まれた1970年代末は、「エクストルーダー」と呼ばれるパフマシーンが登場し、菓子メーカー各社がコーンパフを使った新商品を次々に開発していた時期でした。やおきん(製造は理研)は、この新しい技術を使って何か新しいスナック菓子を作れないか、という発想から開発をスタートさせたといいます。
20〜30円が相場の駄菓子売り場で、10円にこだわる
1979年7月の発売にあたり、開発担当の田中浩次さんたちがこだわったのが「10円」という価格でした。当時の駄菓子の相場は20円から30円が中心。そこへ破格ともいえる10円の個包装商品を実現するため、製造工場から原料・資材の調達、配送に至るまで、あらゆる工程で徹底したコストダウンが図られたといいます。1枚のフィルムを無駄なく切り出せるようパッケージサイズを調整し、段ボールの大きさもトラックの積載効率に合わせて計算されていたそうです。値段を10円に抑えるという一点のために、商品そのものだけでなく、運び方まで設計し直していたことになります。
「持ち歩ける駄菓子」というもう一つの発明
コーンパフは湿気を吸いやすく、それまでのような瓶詰めで売る方法では、すぐに食感が変わってしまうという問題を抱えていました。この課題を解決するために選ばれたのが個包装で、結果として「持ち歩ける駄菓子」という新しい価値も生まれることになりました。棒状のまま持ち運べて、好きなときにポケットから取り出して食べられる―この気軽さも、価格と同じくらい子どもたちに受け入れられた理由だったといえそうです。
サラミ味から60種類以上のフレーバーへ
発売当初のフレーバーは3種類で、このうちサラミ味は現在まで定番として続いています。翌1980年にはチーズ味・バーガー味・やさいサラダ味が加わり、その後も長年にわたって新しいフレーバーが生み出され続け、現在までに60種類以上が発売されたといいます。11月11日が「うまい棒の日」とされているのは、細長い形状が数字の「1」に似ていることに由来するそうです。「キングオブ駄菓子」と呼ばれるまでの定番になった背景には、10円という価格を守り抜くための、地道な工夫の積み重ねがあったことになります。
38年間「仮」の名前だったパッケージの宇宙人
パッケージに描かれた宇宙人風のキャラクターは、うまい棒が発売された1979年当時からずっと変わらず登場し続けています。しかし、このキャラクターに正式に「うまえもん」という名前が付けられたのは、発売からなんと38年後の2017年のことでした。やおきんは2000年に公式ホームページを開設した際、お客さまがすでにそれぞれ思い思いの愛称でこのキャラクターを呼んでいることに気づき、あえて正式名称を決めないという方針を取っていたといいます。
転機となったのは、妹キャラクター「うまみちゃん」が登場したタイミングでした。それまで「うまえもん(仮)」と呼ばれていた名前が、このとき初めて正式採用されることになったのです。発売から40年近く名前を持たなかったキャラクターが、お客さまに呼ばれ続けることで、いつの間にか動かせない「本名」になっていた―そんな成り立ちだったことになります。
40年以上守った「10円」、そして2度の値上げ
発売から2022年まで、うまい棒は1本10円という価格を守り続けてきました。しかし2022年4月、初めて12円へと値上げされます。原材料の高騰に加え、包装資材や配送費の上昇も要因だったと説明されています。20%という大幅な値上げでしたが、世論調査では回答者の約7割が「今まで値上げをしなかったことがすごい」と答えるなど、批判よりもむしろ「よく頑張ってくれた」という受け止め方が目立つ、珍しい値上げになったといいます。
それからわずか2年半後の2024年10月には、原料のコーンをはじめ人件費や輸送費の上昇も重なり、12円から15円へと2度目の値上げが行われました。やおきんは「コスト上昇が自社内でも許容できる範囲をさらに超えてきており、商品の安定供給を図るため」とコメントしています。発売から実に40年以上にわたって価格を据え置いていたこと自体が、うまい棒というブランドがどれだけコストダウンの工夫を積み重ねてきたかを物語っているといえるでしょう。
幻に終わった「うまいうまいバー」という候補
「うまい棒」という商品名も、実は一発で決まったわけではなかったようです。開発担当だったやおきんの田中浩次さんによれば、候補の一つに「うまいうまいバー」という名前もあったといいます。子ども向けのお菓子ということで、テレビ番組「いないいないばあっ」をもじった名前だったそうですが、「あまりにも子どもっぽすぎる」という理由でこの案は見送られました。
子ども向けでありながら中高生でも手に取りやすい名前を、という発想の末にたどり着いたのが「うまい棒」だったといいます。10円という価格へのこだわりだけでなく、名前ひとつを決める段階から、幅広い世代に届く商品にしようという狙いが込められていたことがうかがえます。