チェキの歴史|1998年、その場で写真が出てきたカメラ

公開日:2026年9月3日 更新日:2026年9月11日

友達同士でカードサイズのインスタントカメラで写真を撮り合っている情景のイメージ画像(特定のメーカー・ブランドの再現ではありません)

※AIによるイメージ画像です

シャッターを押すと、その場でカードサイズの写真がプリントされて出てくる——友達同士で撮り合って盛り上がった記憶がある人もいるのではないでしょうか。

スマートフォンで撮った瞬間に画面で確認できる今とは違い、「チェキ」は写真が少しずつ浮かび上がってくるまでの時間そのものが体験でした。このインスタントカメラがいつ生まれ、デジタル化の波をどう乗り越えて今も選ばれ続けているのかを、富士フイルム公式や日経クロストレンドの資料をもとにたどります。

チェキとは?撮ったその場で写真になるカメラ

チェキは、富士フイルムのインスタントカメラ「instax(インスタックス)」シリーズの愛称です。シャッターを押すと、カメラ内部で専用フィルムが自動的に現像され、数分のうちに一枚の写真として手元に出てきます。パソコンやスマートフォンに取り込んで初めて「写真」になるデジタルカメラとは異なり、シャッターを押した瞬間から、手で触れられる一枚の紙が生まれる過程そのものが体験になっている点が大きな特徴です。

富士フイルム公式のチェキマガジンによれば、「チェキ」という愛称は英語の「check it(要チェック)」を短縮した造語で、日本国内だけで使われている呼び方だといいます。海外では、正式なブランド名である「instax」がそのまま製品名として使われています。

現像・プリントという工程を写真店や自宅のプリンターに頼らず、カメラ本体一台で完結させてしまう仕組みは、フィルム式カメラとデジタルカメラのどちらとも異なる、チェキならではの立ち位置を作り出しています。

似たような「その場でプリントされる」仕組みは、レンズ付きフィルム(いわゆる「写ルンです」)やプリントシール機(プリクラ)とも異なります。写ルンですは手軽に持ち歩けるカメラでしたが、写真として仕上がるまでには写真店での現像処理を待つ必要がありました。プリクラは専用の大型機を使う店舗体験で、その場でプリントは出てくるものの、機械を使える場所は限られていました。チェキは、手のひらサイズの本体一つで、誰でもどこでもその場でプリントを完結できる点が独自の立ち位置でした。

出典:FUJIFILM公式「チェキ™とは?フィルムのサイズや名前の意味、最新のラインアップなど!」(Cheki Press)

1998年、初代チェキが登場

富士フイルム公式「歴代チェキの歩み」によれば、初代チェキは1998年11月に「instax mini 10」として発売されました。カードサイズの専用フィルムを使い、シルバーを基調にした近未来的なボディが特徴でした。

日経クロストレンドのインタビューによれば、この初代機を支えていたのは縦型かつカードサイズに収めた新開発のミニフィルム(86mm×54mm)でした。それまでのインスタントカメラのフィルムより小さく、扱いやすいサイズに設計し直したことが、チェキを手のひらに収まる身近な道具にした技術的な土台だったといえます。

製品デザインを手がけた富士フイルムの堀切和久氏(現・執行役員デザインセンター長)は、開発コンセプトについて「精密でカメラらしい雰囲気ではなく、愛嬌があってペットのような、相棒みたいな雰囲気を目指した」と振り返っています。プロダクトデザインはカメラというよりステーショナリーのような身近な存在として意識されていたといいます。精密機器という構え方ではなく、筆箱やノートと同じ感覚で持ち歩ける道具として設計されていたことになります。

翌1999年5月には、プリントサイズがおよそ2倍の「instax WIDE 100」も発売されました。カードサイズの「mini」規格と、大きめにプリントできる「WIDE」規格という2つの系統は、その後の歴代チェキにも受け継がれていく基本設計になりました。用途に応じて2つのサイズを選べるようにしたことは、記念写真から手帳への貼り付けまで、幅広い使われ方を見込んだ製品設計だったとも考えられます。2000年代を通じて、本体のカラーバリエーションを増やしながら展開が続いていきます。

富士フイルム公式のチェキマガジンによれば、2017年には正方形(1:1)の写真がプリントできる「instax SQUARE」シリーズも登場し、カードサイズの「mini」、ひとまわり大きい「WIDE」に次ぐ、3つ目のフォーマットとして加わりました。誕生から約20年をかけて、フィルムのサイズという基本設計そのものが少しずつ広がっていったことになります。

出典:富士フイルム公式「歴代チェキの歩み」/日経クロストレンド「『チェキ』開発の舞台裏を初代担当が語る 年間売り上げ1500億円突破」/FUJIFILM公式「チェキ™とは?フィルムのサイズや名前の意味、最新のラインアップなど!」(Cheki Press)

友達同士でカードサイズのインスタント写真を見せ合い、ペンで書き込んでいる情景のイメージ画像(特定のメーカー・ブランドの再現ではありません)
※当時の雰囲気をもとにAIで作成したイメージ画像です

なぜ「その場で写真が出る」ことが楽しかったのか

スマートフォンなら、撮った瞬間に画面で仕上がりを確認できます。チェキはそうはいきません。シャッターを押してから、フィルムが本体から押し出され、真っ白だった紙に少しずつ像が浮かび上がってくるまでの数分間、待つことそのものが撮影体験の一部でした。

富士フイルム公式のチェキマガジンによれば、フィルムが本体から出てきてから、実際に画像が浮かび上がってくるまではおよそ90秒だといいます。

その場でプリントが完成するということは、撮った写真をその場にいる相手へすぐに手渡せるということでもあります。データとして送る・後で現像する、といった手順を挟まず、一枚しかない紙を「今、ここで」交換できる。この即時性と一回性が、チェキという道具の特徴でした。

友達同士で撮り合い、出てきたばかりの一枚をその場にいる全員でのぞき込む。後から画面で見返すデジタル写真とは違い、仕上がりを待つ数分間そのものを、その場にいる人たちと一緒に過ごせることが、チェキならではの楽しみ方だったといえるでしょう。撮った本人だけでなく、周りにいた人たちも一緒に一枚の写真の行方を見届けられる点は、一人でスマートフォンの画面を確認する体験とは異なる時間の過ごし方だったと考えられます。

撮れる枚数がフィルムの装填枚数に限られている点も、デジタルカメラやスマートフォンとの大きな違いでした。失敗を気にせず量を撮れる便利さとは逆方向にある、一枚を大切に扱う体験そのものが、チェキという道具の個性になっていたといえます。

撮った枚数分だけ、その日の記憶が手元の紙として積み重なっていく。データのままではかさばらない代わりに、意識して見返さない限り目に触れることのないデジタル写真とは違い、チェキの写真は部屋の壁やアルバムに貼られ、日常の風景の中に残り続けるものでもありました。

出典:FUJIFILM公式「チェキ™とは?フィルムのサイズや名前の意味、最新のラインアップなど!」(Cheki Press)

写ルンです・プリクラ、そしてデジタル化の波の中で

富士フイルム公式の年表によれば、チェキが発売された1998年前後は、写真の撮り方そのものが大きく変わりつつあった時期でもありました。1999年には携帯電話にカメラ機能が搭載され始め、写真は「その場で確認できるもの」へと少しずつ姿を変えていきます。

同年表によれば、2005年にはフィルムカメラとデジタルカメラの国内販売台数が逆転し、2008年には日本でもiPhoneが発売されました。2015年にはスマートフォンの利用率がフィーチャーフォン(従来型携帯電話)を上回ったことも同年表に記されており、写真を撮る道具そのものが、この十数年でカメラからスマートフォンへと大きく置き換わっていったことがわかります。

写真を撮る主役が携帯電話・スマートフォンへ移っていく中で、フィルムを使うチェキは一時、決して追い風とは言えない時期を迎えていたことがうかがえます。誰もが手元の一台で写真を撮り、その場で画面に映し出せるようになった時代に、あえてフィルムを消費しながら一枚ずつプリントするという仕組みは、効率という点では分が悪かったはずです。

出典:富士フイルム公式「歴代チェキの歩み」

2012年、パステルカラーで「チェキブーム再来」

富士フイルム公式によれば、こうした流れの中で2012年11月に発売された「instax mini 8」は、ピンク・ホワイト・ブルー・ブラック・イエローのパステルカラー5色を展開し、「世界で一番“カワイイ”インスタントカメラ」として若年層に人気となり、公式の年表でも「爆発的ヒット」と紹介されるほどのヒットになりました。

デジタルカメラやスマートフォンで写真を撮ることが当たり前になっていた時代に、あえてフィルムで一枚だけをプリントするチェキが、パステルカラーという新しい入り口を得て選ばれ直した、というのが公式年表からたどれる流れです。

パステルカラーの本体は、機能や性能ではなく、持っていて楽しい・人に見せたくなるという、道具としての魅力を前面に出した提案だったといえるでしょう。

その後もinstaxシリーズは、デジタル機能を組み合わせたモデルやスマートフォン用プリンターへと展開を広げ、フィルムで撮るカメラとしての側面と、デジタル機器と組み合わせて楽しむ側面の両方を持つ製品へと育っていきました。

出典:富士フイルム公式「歴代チェキの歩み」

スマホ時代にもチェキが選ばれ続ける理由

日経クロストレンドの記事によれば、富士フイルムはZ世代にチェキが支持される理由の一つとして「唯一無二の『モノ』としての価値」を挙げています。写真のほとんどがデータとしてスマートフォンの中に収まる時代だからこそ、手に取れる一枚として残るという点が、あらためて評価されているということになります。

スマートフォンで撮った写真の大半は、プリントされることなくデータのまま保存されていきます。その中であえて一枚だけプリントされるチェキの写真は、日常のほとんどがデジタルで完結する世代にとって、目新しい体験として映ったとしても不思議ではありません。

ねとらぼの記事によれば、こうした人気は国内にとどまらず、海外でもチェキのレトロなデザインと撮影体験への関心が高まっており、富士フイルムはわずか4年で3度、instaxフィルムの増産を決定したと伝えられています。東洋経済オンラインの記事によれば、富士フイルムが2019年5月8日発表の決算で開示した数字として、2018年度(2018年4月〜2019年3月)の年間販売台数は1,002万台にのぼり、発売25周年にあたる2023年度にはinstaxシリーズ全体の売り上げが過去最高の1,500億円を記録するなど、誕生から四半世紀以上を経てなお、成長を続けている製品であることがうかがえます。

出典:日経クロストレンド「Z世代はなぜ『チェキ』を買う? 富士フイルムが捉えた3つの特質」/ねとらぼ「日本のレトロカメラ『チェキ』の海外人気が止まらない 富士フイルムは4年で3度のフィルム増産」/東洋経済オンライン「富士フイルム「チェキ」、年1000万台なぜ売れる」/日経クロストレンド「『チェキ』開発の舞台裏を初代担当が語る 年間売り上げ1500億円突破」

写真が浮かび上がるのを待った時間

手のひらの中で、真っ白だった一枚の紙に少しずつ像が現れてくる。その数分間を友達と一緒にのぞき込みながら待った経験は、スマートフォンで撮った写真をすぐに見返すのとは、また違った時間の感触だったのではないでしょうか。

撮り直しがきかない一枚だからこそ、その場に居合わせた人だけで分け合える写真になる。何百枚と撮り溜めてもデータのまま残らないスマートフォンの写真とは違い、手元に残った一枚のチェキは、それを撮った日のことを思い出すきっかけとしても、独特の存在感を持っていたのではないでしょうか。

1998年の登場から四半世紀以上、写真を撮る道具そのものは大きく様変わりしました。それでもチェキが今も選ばれ続けているのは、便利さでは測れない何かを、この小さなカメラが持ち続けているからなのかもしれません。

あわせて読みたい

同じ写真文化の歴史は写ルンですや、プリクラの歴史でもあわせて確認できます。

学校生活の集合写真がまとめられた記録としては卒業アルバムとは?でもたどれます。

あなたが子どもの頃のカメラは?

生まれ年を選ぶと、あなたが子どもだった頃の年代・年齢帯にまつわるページへのリンクを表示します。

生まれ年の入力方法

これ覚えてる?

学校・地域・年代によって内容は異なります。あなたの記憶と重なるものはありますか?

  • チェキで友達と写真を撮り合ったことはありますか?
  • プリントされた写真をアルバムに貼ったことはありますか?
  • お気に入りのボディカラーはありましたか?

出典・注意事項

本ページは、富士フイルム公式サイト、東洋経済オンライン、日経クロストレンド、ねとらぼの記事をもとに構成しています。個別の情報については、各見出しに出典を明記しています。「1,002万台」は富士フイルムが2019年5月8日発表の決算で開示した2018年度の年間販売台数、「1,500億円」は2023年度のinstaxシリーズ全体の年間売上を指し、いずれも累計や富士フイルム全社売上ではありません。

ページ内のイメージ画像はAIによるものであり、特定の人物・場所・年代を再現した実際の写真ではありません。